なぜ今、貴金属なのか?
資産形成がある程度進み、株式や投資信託での運用が軌道に乗ってきた30代・40代の投資家にとって、次に考えるべきは「守り」の戦略ではないだろうか。
インフレ懸念や地政学リスクが高まる中、伝統的なペーパーアセット(株式・債券)だけでは、急激な市場変動に対応できない可能性がある。
そこで注目されるのが「貴金属(ゴールド・シルバー・プラチナ)」だ。
長期的な視点で資産を守り抜くために、貴金属をどうポートフォリオに組み込むべきか、そしてETF(上場投資信託)と現物のどちらを持つべきかについて解説する。
1. 貴金属をポートフォリオに入れる「考え方」
貴金属への投資は、単に値上がり益を狙うためのものではない。ポートフォリオ全体のリスクをコントロールするための調整弁としての役割が期待される。
株式との相関性と分散効果
一般的に、貴金属(特に金)は株式とは異なる値動きをする傾向がある。
株式市場が暴落した際に、貴金属が価格を維持、あるいは上昇することで、資産全体のダメージを軽減する効果が期待できる。これを無相関資産や逆相関資産と呼ぶ。
※ただ昨今では株式の上昇と共に、貴金属価格も上昇している。
「有事の金」としての保険機能
貨幣(法定通貨)は、国が信用を失えば価値が大きく毀損する可能性がある。一方で、金や銀などの貴金属は、それ自体に価値がある実物資産となっている。
数千年の歴史の中で、貴金属はその価値を完全に失ったことはない。資産の一部を貴金属に変えておくことは、究極的な経済危機に対する保険を掛けるような意味合いを持つ。
2. 徹底比較:ETF vs 現物
貴金属を持つ手段として、代表的なETFと現物購入。それぞれのメリット・デメリットを整理する。
ETF(上場投資信託)の特徴
ETFは証券口座を通じて、株式と同じように売買できる金融商品だ。
- メリット:
- 手数料が安い: 購入時のコストや管理コスト(信託報酬)が低めに抑えられている。
- 流動性が高い: 市場が開いている間であれば、いつでも売買が可能。
- 保管場所が不要: 物理的な盗難リスクが無い。
- 現物に交換可能: ある程度量を貯めると現物を引き出せるETFもある。
- デメリット:
- カウンターパーティリスク: 万が一、運用会社や仕組み自体が破綻した場合、資産が守られないリスクがゼロではない。また現物を引き出せるETFの場合、もし在庫が無くなれば引き出せない可能性もある。
現物(コイン・バー)の特徴
田中貴金属や三菱マテリアルなどの貴金属店で、物理的に購入する方法。
- メリット:
- 所有権の完全性: 誰の負債でもない、完全な私有財産として手元に置ける。システム障害や金融危機で口座が凍結されても、手元に資産が残る。
- 現物の満足感: 美しいコインやバーを保有する喜びは、長期保有(ガチホ)のモチベーション維持に繋がる。
- デメリット:
- スプレッド(手数料)が高い: 購入価格と売却価格の差(スプレッド)が大きく、短期売買には向かない。長期目的で数年間保有する必要はある。
- 保管・盗難リスク: 自宅金庫や貸金庫での管理が必要。最近は貸金庫も安全とは言えなくなっている。
3. 結論:ETFと現物、どちらを持つべきか?
結論として、ある程度資金に余裕がある30代・40代の方には、ハイブリッド保有の検討をおすすめする。それぞれのおいしいとこ取りをする戦略。
戦略例:目的別に使い分ける
- ポートフォリオの調整用(〜5%):ETF
- リバランス(資産配分の調整)のしやすさを重視し、サテライト的に保有する場合はETFが便利となる。
- 超長期の資産保全用(〜5%):現物
- 老後まで売らない、子供に残すといった、10年・20年単位の保有であれば、現物が適している。日々の価格変動を気にせず、金庫の奥にしまっておくスタイル。
このように、資産全体の10%程度を目処に、流動性の高いETFと、安全性の高い現物を組み合わせることで、盤石な資産形成が期待できるかもしれない。
4. 貴金属投資のリスクと注意点
貴金属は安全資産と言われますが、リスクがないわけではなく以下の点には十分注意が必要となる。
利息や配当を生まない
株式や債券と異なり、貴金属を持っているだけでは利息や配当金は発生しない。価格そのものが上昇しない限り、インカムゲインは得られないという機会損失のリスクがある。
為替リスク(日本円建ての場合)
国際的な金の取引は米ドルで行われる。そのため、国内価格はドル建て金価格とドル円為替レートの影響を強く受ける。
金価格が上昇しても、急激な円高が進めば、円建ての資産価値は目減りする可能性がある。また米国が利上げをすると金利の付かない金価格にとっては逆風となる。逆に利下げは追い風となる。
価格変動リスク
短期的には大きく価格が下落することもある。歴史的高値圏で購入した場合、高値掴みとなり、含み損を抱える期間が長くなる可能性も考慮する必要がある。
銀やプラチナのリスク
銀やプラチナは金よりだいぶ安いため玄人の投資家に人気がある。ただ市場規模が小さいため、値動きはかなり激しい。そのためポートフォリオに加えるとポートフォリオのボラティリティは大きくなると言えよう。
5. いつ買えばいいか?
- 暴落を待つ
- 積み立て投資
基本的に私の投資方針は積み立て投資をしつつ、暴落時にスポット購入をしている。
まとめ
貴金属をポートフォリオに組み込むことは、攻めの投資で得た資産を、不測の事態から守るための有効な手段となり得る。
- ETF: 手軽さと低コストを重視
- 現物: 究極の安全性と所有する喜びを重視
どちらか一方に絞る必要はなく、ご自身のライフプランや資金の性格に合わせて、両者をうまく組み合わせながら、長く付き合っていくのが賢明なアプローチと言える。
※本記事は情報の提供を目的としており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資判断はご自身でお願いいたします。


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