はじめに 安全資産か、それとも攻撃の準備か
一般的に、投資において現金(キャッシュポジション)を多く持っている人は保守的で、リスクを恐れている慎重な性格だと思われがちだ。
逆に、資産のほとんどを株式などのリスク資産に投じているフルインベストメントの投資家は、より多くの利益を求める攻撃的で欲深い人間だと見なされることが多い。
しかし、投資の深層心理を紐解くと、この常識は真逆である可能性が浮かび上がってくる。
実は、大量の現金を保有し続けている投資家こそが、市場平均以上のリターンを狙う最も欲深い捕食者であり、常にポジションを持っている投資家の方が、市場に対して謙虚で欲が少ないという見方ができるのだ。
本記事では、30代・40代の投資家が陥りやすいキャッシュポジションの罠と、その裏にある心理的メカニズムを解剖する。
1. キャッシュポジションが積み上がる真の理由
なぜ、ある種の投資家は頑なに現金を手放さないのか。それは彼らが臆病だからではない。
彼らは、現在の株価では満足できず、より安く、より有利な条件で買い叩こうと虎視眈々と狙っているからだ。
つまり常にバーゲンセールを狙っている。
暴落を待ち構えるスナイパーの心理
手元に現金を残している投資家の頭の中にあるのは、大暴落への期待である。
彼らは市場がパニックに陥り、他の投資家が狼狽売りをして株価が適正価値を大きく下回る瞬間を待っている。
その時こそ、温存していたキャッシュという弾薬を一気に投入し、底値で資産をさらうことで、市場平均を凌駕する圧倒的なリターンを得ようと企んでいるのだ。
この暴落待ちという行為は、自分だけは市場のタイミングを計れるという自信と、他人よりも儲けたいという強烈な自我(エゴ)の表れであると言える。
またデフレ時代に起きた大小の暴落を利用して儲けてきた投資家が、その名残りで今も暴落待ちをすることが多い。
最大効率を求める完璧主義
ウォーレン・バフェットがバークシャー・ハサウェイの手元資金を過去最高レベルまで積み上げたことが話題になるが、これもまた究極の選球眼の表れだ。
彼らは妥協して高値で買うことを拒否し、最高に美味しい球が来るまでバットを振らない。
この態度は、一見静かに見えるが、その内実は1ミリの損もしたくないという極めて強欲な完璧主義に基づいている。
2. フルインベストメントは市場への降伏と謙虚さ
一方で、余剰資金ができ次第、機械的に市場に投入し、常にキャッシュポジションが少ない投資家はどうだろうか。
彼らは一見リスク中毒に見えるが、その本質は悟りに近い。
タイミングを計ることを諦めた境地
常にフルインベストメントであるということは、自分には相場の先行きを読む能力がないと認めていることと同義だ。
明日暴落するかもしれないし、暴騰するかもしれない。未来は誰にも分からないのだから、常に市場に居続けることで、市場全体の成長(ベータ)を甘受しようとする。
ここには、市場を出し抜いてやろうという邪念はなく、平均点で満足するというある種の謙虚さが存在する。
機会損失を恐れる臆病さではなく合理性
彼らが恐れているのは暴落ではなく、稲妻が輝く瞬間に市場に居合わせないことだ。
過去のデータにおいて、市場のパフォーマンスの大部分はごく少数の上昇日によってもたらされている。
S&P500が成長し続けると信じ、その恩恵をとりこぼさないために資金を投じ続ける。
3. 30代・40代が直面する 待つリスク と 持つリスク
長期的な資産形成期にある30代・40代にとって、強欲なキャッシュ待機戦略と、謙虚なフルインベストメント戦略、どちらが正解なのか。
インフレという名の現金への罰則
強欲に暴落を待つ戦略には、インフレという天敵が存在する。現在のインフレ率は高く推移しており、現金の購買力は日々目減りしている。
暴落が来ないまま数年が経過すれば、待機していたキャッシュの実質価値は毀損し、機会損失は膨大なものになる。
欲をかいてタイミングを計った結果、資産形成のスピードが鈍化するリスクは決して低くない。
精神衛生と資産配分のバランス
一方で、完全なフルインベストメントは、暴落時に精神的な逃げ場を失うリスクがある。
謙虚であることは美徳だが、資産が半減する恐怖に耐えられずに底値で売却してしまっては元も子もない。
重要なのは、自分の性格がスナイパー型(強欲)なのか、農耕型(謙虚)なのかを見極め、心地よいキャッシュ比率を維持することだ。
また心配な人は生活防衛資金を確保しておいた方がいいかもしれない。
キャッシュポジションではなくゴールドポジションにする
管理人がやっているのはキャッシュポジションではなく、ゴールドポジションだ。
キャッシュではなく、ゴールドで保有している。ETFやゴールドのトークンなどもある。
このように現金ではなく、安全資産に資金を逃すのも一つの手だが、ゴールドの市況が悪化した時に損するリスクはある。
年初一括投資
最近では年初一括でNISA枠を埋める投資家が一定数いる。実際のところここ数年は年初一括投資が報われてきた。
私の場合はNISA成長枠を積み立てしつつ、大きめの暴落が来たらスポット購入したいと思っている。
4. 暴落待ち戦略の致命的なデメリット
最後に、強欲なキャッシュポジション戦略に潜む最大のリスクを明記しておく必要がある。
落ちるナイフを掴む恐怖
いざ待ちに待った大暴落が来た時、キャッシュを持っていた投資家が実際に買い向かえる可能性は意外と低い。
市場がパニックになり、経済崩壊が叫ばれている中で、全財産を投じるには異常な精神力が必要だからだ。SNSも阿鼻叫喚の地獄絵図になるケースが多い。
結果として、まだ下がるかもしれないという恐怖に支配され、絶好の買い場を見送ってしまう。
そして株価が回復した後に、買っておけばよかったと後悔する。これが強欲な投資家の典型的な末路となる可能性がある。
上昇相場での取り残され
市場は長期的には右肩上がりである。待っている暴落が、現在の株価水準よりも高い位置で止まる(押し目が現在の価格より高い)ことも珍しくない。
完璧なタイミングを求めすぎるあまり、永遠に上昇列車に乗れないまま、駅のホームで現金を抱えて立ち尽くすリスクがあることを忘れてはならない。
一時的な大暴落を乗り越えて成長している
過去を振り返ると、同時多発テロやリーマンショックやコロナショックのような壮絶な大暴落も時間が経てば元の成長軌道に戻っている。
大暴落が起きるとその都度世界の終わりだみたいな雰囲気になるが時間が解決している。
恐らくこの先も終末的な出来事が起こるかもしれないが、優良な株やETF、インデックスファンドは回復局面で元に戻る可能性が高い。
コア・サテライト戦略のコア部分は動かさない
どうしても株式相場で大きな先安感を感じた場合、コア(インデックスファンド)・サテライト(個別株)戦略で投資をしているならば、コア部分は動かさずサテライト部分のみ一部現金化するという手段も取れる。
コア部分をそのまま保有した場合、相場が目論見通り下がらなかったとしてもコア部分を保有しているので、値上がりを追求できる。
まとめ
キャッシュポジションが厚い投資家は、保守的どころか、誰よりも大きなリターンを狙う野心家である。
自分が市場平均以上の成果を上げられると信じるなら、現金を積み上げてその時を待てばいい。
しかし、もし自分に予知能力がないと認めるなら、謙虚に市場に資金を晒し続けることだ。
30代・40代の投資家にとって最も危険なのは、自分の中にある強欲さを慎重さと勘違いし、動かないことのリスクを過小評価することである。
※本記事は情報の提供を目的としており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資判断はご自身でお願いいたします。


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