はじめに ポートフォリオはあなたの健康診断書である
投資手法の選択は、単なる知識や好みの問題だと思われがちだ。しかし、実際には投資家の生理的な状態、つまり心身の健康レベルが、無意識のうちに投資スタイルを決定づけている可能性が高い。
睡眠が十分で精神が満たされている人間は、退屈だが確実性の高い長期投資を好む。一方で、慢性的なストレスや疲労、あるいは精神的な不安を抱えている人間ほど、脳内麻薬を求めてハイリスクな短期売買に依存する傾向がある。(あくまでも傾向)
本記事では、なぜ健康な人は王道を歩み、不健康な人は投機という修羅の道を選んでしまうのか、その脳科学的メカニズムを解明する。
1. 健康な人が長期投資(王道)を選べる理由
心身が健康であるということは、脳内のセロトニン(幸福ホルモン)が安定して分泌されている状態を指す。
この状態にある投資家は、以下のような心理的特徴を持つため、自然と王道の投資を選ぶことができる。
未来を信じる能力
健康な人は、自分には長い未来が残されていると無意識に確信している。
そのため、10年、20年先を見据えた複利の効果を待つことができる。彼らにとって時間は味方であり、今すぐ結果を出す必要がない。
S&P500や全世界株式といったインデックスファンドを淡々と積み立てる行為は、この精神的な余裕から生まれる。(なおS&P500や全世界株式を選ぶのが絶対正解というわけではない)
刺激を必要としない平穏さ
精神が安定している人は、日常生活の中で十分な満足感を得ている。そのため、相場に対して過度なスリルや興奮(ドーパミン)を求める必要がない。
投資を単なる資産形成の手段と割り切り、退屈な作業として淡々と実行できる能力こそが、長期的な資産形成の成功確率を高める要因となる。
2. 不健康な人が短期売買(投機)に走る理由
対照的に、睡眠不足や過労、メンタルの不調を抱えている人は、常にコルチゾール(ストレスホルモン)にさらされている。
この不快な状態を解消しようとする防衛本能が、投資行動を歪ませる。
痛み止めとしての即時利益
精神的に不安定な状態にある脳は、現在の苦痛を和らげるために、手っ取り早い快楽を求める。投資において最も強烈な快楽は、短期的な利益確定によるドーパミンの放出だ。
彼らがFXや暗号資産のレバレッジ取引、あるいはデイトレードを好むのは、それが資産形成のためというよりは、日々のストレスを麻痺させるための鎮痛剤として機能しているからである可能性がある。
それら投機的な手法がモルヒネ(痛み止め)のような効果があると考えていいだろう。
待つことへの恐怖
不健康な人は、将来に対する漠然とした不安や、自分には時間がないという焦燥感を抱えていることが多い。
そのため、20年後の大きな利益よりも、今日の小さな利益を優先する現在バイアスが極端に強くなる。
投機的な手法を好む人でも、生活習慣を変え、食生活を整えることで王道的な投資を志すこともできる。良くも悪くも習慣の力は大きい。
3. コルチゾールがIQを下げる
生物学的な観点からも、ストレスと投資判断の質の関係は説明できる。
過度なストレス下では、論理的思考を司る前頭前野の機能が低下し、感情や本能を司る扁桃体が優位になる。
つまり、精神が不安定な状態では、複雑な財務分析や長期的なリスク計算ができなくなり、直感や感情に任せたギャンブル的な決断をしやすくなるのだ。
寝不足の頭でチャートを見ることは、酔っ払って運転するのと同程度に危険な行為であると認識すべきだ。
4. 健全な長期投資にも潜むリスク
健康な精神が生む長期投資は合理的だが、盲点がないわけではない。
リスクを取らなすぎるリスク
精神が安定しすぎている場合、過度に保守的になり、必要なリスクさえ回避してしまう現状維持バイアスに陥る可能性がある。
インフレ率が高い状況下でリスクを避けて現金をたくさん保有すると、実質的な資産価値を減らすリスクとなる。
管理者の知り合いでオルカン積立を開始した人がいたが、わずかな額しか積み立てをしていない。
確かにオルカン積立は素晴らしいがわずかな額ではインフレに負けてしまう。
退屈という敵
王道の投資は極めて退屈だ。健康な人であっても、人生のふとした瞬間に魔が差し、刺激を求めて余計なポジションを持ってしまうことがある。
退屈さに耐えることもまた、一種の精神的タフネスが求められる。
退屈さに耐えるために座禅などの行が必要だ。
長期的な手法を取れば必ず儲かる
長期的な手法を取れば必ず儲かるというわけではない。また短期的な売買が必ず失敗するというわけでもない。例外はある。
例えば倒産や不祥事を出すような会社を長期間保有するわけにはいかないし、色々なスパンでの投資を試して自分に合う期間を見つけ出すのも投資の醍醐味と言える。
また相場環境や時代によっても短期売買がいいのか、長期投資がいいのかも異なってくる。少なくとも今の時代はBuy & Holdの時代だ。
まとめ
投資のパフォーマンスを向上させるための最短ルートは、チャート分析を学ぶことではなく、ジムに行き、良質な食事を摂り、十分な睡眠をとることかもしれない。
30代・40代の投資家にとって、最大の資本は自分自身の心身である。もし今、短期的な値動きに一喜一憂し、投機的な売買を繰り返してしまっているなら、まずは自分の生活習慣を見直すべきだ。
健全な精神を取り戻した時、自身のポートフォリオは自然と王道の形へと修正されていくはずだ。
※本記事は情報の提供を目的としており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資判断はご自身でお願いいたします。


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