ペーパー資産が支配する価格形成の歪み
金や銀の価格は、長らくCOMEXなどの先物市場における取引によって決定されてきた。しかし、この仕組みが実物資産の需給バランスを正確に反映していないという指摘が相次いでいる。いわゆる価格発見機能の機能不全である。
ペーパーによる価格操作が横行しており在庫はない。
現時点で銀は深刻なバックワーデーション(逆ザヤ)となっている。「今すぐ現物をよこせ!さもないと…」という深刻な状態だ。
需給が深刻な状態にも関わらず紙銀の価格は暴落して落ち着いている。つまり紙銀価格は全く正確な値段ではない。
現物と乖離した膨大な取組高
先物市場で取引される金・銀の量は、実際に地球上に存在する現物の量を遥かに凌駕している。現物の受け渡しを伴わないレバレッジを効かせたペーパー(証券)上の売買が、実物の希少性や需給を無視して価格を決定している状況にある。
これにより、現物が不足していても、先物市場での大規模な売りによって価格が抑制されるという不条理な現象が起きやすくなっている。
中央銀行と現物需要の脱・欧米加速
COMEXの価格決定力に陰りが見える最大の理由は、現物の実権が欧米からアジア、そして中央銀行へとシフトしている点にある。
1. 中央銀行による記録的な現物購入
世界中の中央銀行、特に新興国は、ドル依存からの脱却(デドラリゼーション)を目指し、現物ゴールドの備蓄を加速させている。彼らはCOMEX上の数字ではなく、現物の保有を重視しており、これが価格の下値を支える強力な要因となっている。
2. 上海黄金交易所(SGE)等の台頭
中国をはじめとするアジア市場での現物取引量が増加しており、COMEXの価格を無視したプレミアム(上乗せ金)が付くケースも散見される。現物の裏付けを重視する市場の台頭が、先物市場主導の価格形成を無効化しつつある可能性がある。
3.テスラとサムソンは鉱山と直接契約を結んでいる
かつてコモディティ(商品)市場は、COMEXなどの取引所が決定する価格に従って取引されるのが常識であった。しかし、テスラやサムスンといった、製品の心臓部に銀やニッケル、リチウムを大量に使用する企業にとって、もはやペーパー(証券)上の価格形成は信を置くに足りないものとなりつつある。
彼らは今、取引所を通さず、鉱山会社と直接、長期のオフテイク契約(引き取り契約)を締結し、資金を直接供給することで現物の確保に走っている。
投資におけるリスクとデメリット
価格発見機能の不全を前提とした投資を行う場合でも、以下のリスクを無視することはできない。
- 元本割れのリスク: 市場の歪みが是正されるまでには長い時間を要する場合があり、その間に先物主導の急落によって投資元本を大きく割り込む可能性がある。
- 流動性の欠如: 現物資産は先物やETFに比べ、売却したい時に即座に現金化することが難しく、手数料(スプレッド)も高くなる傾向がある。
- 保管と盗難のリスク: 現物を自身で管理する場合、保管場所の確保や盗難のリスクを伴う。
結論:数字のゲームから実物の保有へ
COMEXの価格発見機能が機能していないとするならば、投資家が信じるべきは画面上のチャートではなく、手元にある現物の重みである。30代、40代の投資家にとって、貴金属投資の本質は値上がり益を狙うトレードではなく、不透明な金融システムに対する保険としての現物保有にこそあるのではないか。
もし紙の価格で現物が買えるなら一大事だが、現物はもはや紙の価格では買えない。
レバレッジをかけた紙の上の数字に一喜一憂するフェーズは終わり、実物資産の真の価値が問われる時代へと移行している可能性がある。
紙の上の数字に騙されてはいけない。紙はもはや投機家が売買するだけの市場に成り下がり、実需家は手を引き、全く意味の無い数字となっている。
※本記事は情報の提供を目的としており、投資の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資判断はご自身でお願いいたします。


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